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予算48,000円ッ!ウイグル&パキスタンぶらり一人旅#26 さようならのウイグル

クチャへ向かおうとしていた前日のことだ。
そのクチャでテロが発生したと、
インターネットでは大きなニュースになっていた。
中国国内での報道では目にも耳にもしない。
いつもの平和な中華人民共和国だった。

宿でパッキングを済ませ、
一緒に国境を越えた日本人と2人で、
バックパックを背負ってエイティーガール寺院付近まで来た。
腹ごしらえとしてタンメンとペトゥル・マントゥ(蒸し餃子のようなもの)を食べた。
うまい。
食後のデザートはもちろんアイス。
ウイグルで食べるアイスもこれで最後かと思いながら駅へと歩いた。
移動用の食料として用意したのはナン1枚と水1本のみ。

テロの一報を聞いたので、
クチャはすでに行った場所だったし、
あえて滞在することもなかろうと予定を変更することにした。
駅の煩わしいチェックをパスし(列車にも手荷物検査やらで空港みたいに念入りにする)、
13:46発N888に乗車し、それから車内にてチケットをトルファン行きのものに換えた。
換票(ファンピャオ)すると手数料100元。
絶対多めに徴収されている。
最初っからトルファン行きのものを買っておけば良かった。
ま、後の祭りなのだが。

列車に乗込み自分の座席を見つけると、
自分の頭上にある網棚に荷を置こうにも
一杯だったのでとりあえず向かい側に置いておいた。
すると後で乗り込んで来た中国人たちが、
ブルドッグみたいな表情でギョロリとこちらを睨み、
いちゃもんをつけて怒鳴ってきた。
甚だ鬱陶しい連中である。
静かにものを言えないのか。

車内はひたすら退屈だったが、
途中3席を独り占めできたことは体力と精神的には余裕が生まれた。
いつもの事ではあるが、
マナーの悪さには慣れたとは言え、相変わらず気にはなる。
平均的な日本人なら大分気になる筈。
隣に腰掛けた中国人はイヤホンをつけるわけでもなく、
爆音で携帯電話からの音楽を楽しんでいる。
辟易の意味は中国で真の理解をできたような気さえする。
そんなとき大活躍だったのはipod。完全防音。
そして最後の手持ち小説、『月光の東』(頂き物)を読んだり、
寝たり、ぼーっとしたり。
食料もナン1枚と水のみで少しずつ齧っては水を飲んで満腹中枢を刺激。
耐える耐える。
到着予定時刻が翌日のお昼。
乗車時間22時間程度だった。

トルファンに到着して列車から降りると、
例のカシュガルでも一緒だった日本人が見送りのために列車から出てくれていた。
(普通の日本人は硬座なんて乗らないから別の車両だった。彼は2等寝台に乗っていた。)
こういった気遣いには全くもって心があたたまる。本当に嬉しい。
旅をしていると色んな人に否応無しで出会う。
自然と感謝の気持ちも強くなる気がする。

トルファンでまず行ったのが列車確保。
しかしお目当ての列車は既になくK596という
すごく鈍い列車になってしまった。鈍行だ。
出発時刻はコレまた13:46。
時間は十分あったので、食事をする事にした。
適当に入った店でラグ麺を頼むとなんと豚肉入り!
イスラムは豚肉食っちゃ行かんのに、
この土地でこんなふざけた模倣をしているとは!
舐めてるとしか言いようがない。
イスラム教徒の人が間違えて入ったらどうしようというのだ。

食事をしているとき、ちょうどオリンピックがテレビで放送していた。
種目は体操の団体。
日本チ-ムの競技に見とれてしまった。
こんな土地でまさか祖国の頑張りが観れようとは!
金ではなかったが銀メダル。
十分すごいよと思いながら目頭熱くして見ていた。
店のおばちゃんなんかはこちらが日本人ともつゆ知らず。
日本人たった一人で観戦ってなんとも不思議な心持ちになった。
きっと旅をしながらじゃないとこうは思えなかっただろう。

そうして、わずかな食料を手に
これから48時間座っていなければならない列車に乗り込んだ。
鈍行ということもあり席は空いていた。
ラーメンで有名な蘭州まで来ると少し人が増えた。
残り僅かとなった小説もすぐに読み切り、ただただ暇な時間が流れる。
ipodも電池がなくなる。
残り丸一日以上あるのにこう何もなくなると、本当に辛い。
今まで乗ってきた列車の中で間違いなく今回が一番苦痛に感じた。
そんな事はおかまいなしで列車は自分とおかしな人民たちを乗せて鈍く進んで行った。
財布に残っていたのは僅かに100元程度だった。

TAKA

TAKA

酒好きの旅人

唎酒師。 カメラを持った酔っぱらい。 3歳の頃の夢は旅人。 好き嫌いなしの健康優良児。 無類の猫好きでもある。

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