暑い夏を無事に乗り越えられた安堵感、稲の収穫を迎える充実感がともなっています。
静かに深呼吸するような、清らかな安寧です。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞ驚かれぬる 藤原敏行
初秋は「竹の春」です。春に生まれ、夏の間に大きく勢いを増した笹竹が、風を受けて、ざわめく頃。昔の人々は「揺れるもの」に霊性を感じていました。
サワサワ、ザワザワと揺れる笹や竹は、秋の訪れを告げるものであり、祖霊のためのヨリシロでもあったのです。
我が身にふりかかる雨も、見渡してみれば、ありとあらゆるものに降り注いでいます。目の前の小さなことにとらわれていると、全体がみえなくなります。
「一雨千山を潤す」。この地球に共に生きる生命を愛しみ、大きく想像の羽を広げて観ること。視点を変えてみれば景色は変わるという教えです。
紫陽花の語源はアジ(集)サイ(藍)。別名、四葩(よひら)とも。雨に濡れてたちのぼる土の匂いは、土壌の酵素と呼ばれる放線菌の香り。
五月晴れは、梅雨の合間の清々しい晴天です。
梅の実が黄ばみ、梅雨入りする五月雨月。さみだれは当て字で、サは聖なる、ミダレは水垂れ。田植えを終えたばかりの稲の成長に欠かせない雨が降ります。
梅雨入りは、米を主食とする日本にとって、恵みの雨です。
五月五日に降る雨を、薬雨ともいいます。
その雨で、医薬を製すると特に薬効があるとされていたのです。じめじめした邪気を払う皐月は、いわば日本のアロマテラピー月間。
邪気を祓う薬玉のルーツは、菖蒲やよもぎを糸で丸めた簡素なものでしたが、次第に香料を詰めた豪華な玉になっていきました。
白は初夏の印。和暦の卯月は初夏の始まりです。
白は新緑の美しさを一層、美しくみせてくれる最良の色といえるでしょう。緑と白のコントラストは目にしみるような清々しさで卯月を象徴しています。
ゴールデンウイークに立夏を迎える日本は、衣替えの季節。
ゴールデンウイークをすぎると、途端に夏めいてうっすらと汗ばむような陽気に、人間たちも白い衣類を身につけたくなります。
白を身につけることが気持ちいい季節ですし、見ている側も眩しい白さに目を細めるような生の喜びを感じずにはいられません。
さまざまな木の芽がぐんぐん大きくなって、梅もほころび始めました。
雪の降る寒い日もありますが、はっきりと春の気配を感じ始めていらっしゃる方が多いこととおもいます。
睦月は、家族や親戚が集まって、仲良く睦み合う月。結びの月です。
かつては立春に近い新月が新しい年の始まりでした。
今年の新月は2月19日で、そこからが和暦の睦月ということになります。人々が互いに行き交い、絆を確かめ合い、感謝するとき。
お正月は日頃、顔を会わせることのない新類縁者の方々の優しさに触れたり、小さかった頃の幼い自分を思い出し、育ててもらったご恩や、年賀状で懐かしいご縁に心がふるえることもあるでしょう。